PTSD  複雑性 PTSD  急性ストレス障害、解離性同一性障害治療の心理療法、トラウマ・ストレス・ケア・セラピー、うつ病・うつ状態と再発防止、双極性障害、自信がない・自己批判・自己否定、自己嫌悪。不安・恐怖、慢性疲労、運動障害、疼痛、自律神経系不調。不登校、学習指導、人間関係・家族の相談

 


PTSD 心的外傷後ストレス障害の理解と対応(3)


PTSD のまとめ 「PTSDとは」
PTSD
トラウマ体験後に起こることの多い一般的な状態・反応・症状

■ PTSD まとめ 「PTSDとは」

■ 通常体験を超えた出来事によって生じる殆ど全ての人に著しい苦痛となる体験(トラウマ)。
生命や身体的安全・生理・心理への重大な脅迫。
だれでも、突然に、どこかで、理由なく遭遇する可能性があります。

 


■ 心理的反応:こころは回復の為に活動性を高めます。
・ 侵入・再体験 (いろいろなことが思い出されてくる)
・ 回避無感覚(何も感じなくなる)体験に関連する事柄を避ける努力 場面を思い出すことが出来ない
・ 苦痛な夢 興味の減退
・ 感情範囲の縮小
・ あたかもそこにいて体験しているように感じる
・ 未来が縮小した感覚・孤立感・疎外感 (離断感)
・ 自己無力感
・ 事実が明らかになることへの激しい苦痛
 
■ 生理的反応:身体は回復の為に活動性を高めます。(生理的過剰覚醒)
・ 敏感性 除反応 情動性の高まり 不眠・過剰性活動 ・・なのに・・・出来ない(解離)
・ 激怒
・ 集中不可
・ 過剰な警戒心
・ 過度な驚愕反応
・ 起想関連場面での発汗
 

※ 脳は自分を守るために回避・無感覚になり、解決の準備が整うと侵入・再体験が生じてきます。

※ 心理的に大変な時は、生理(身体)も何とかしようと自分を守る戦いに入ります。
眠れないし、食べられない。それよりも覚醒続けることにエネルギーが使われる状態になります。

※ PTSD、トラウマ・ストレス症状は、正常な心身の反応です。


■ PTSD(心的外傷後トラウマ・ストレス障害)は、ASD(急性ストレス障害)が、慢性化(遷延:神経系のパターン化)したものです。ASDは、多くの場合、自然回復しますが、症状・反応・状態が1年以上続く場合は、回復・解消(神経系の再パターン化)に専門のサポート、アプローチが必要とされています。


■ PTSD トラウマ体験の後に起こることの多い一般的な状態・反応・症状
 

1 恐怖と不安、緊張

危険に逢っているときに、恐怖、不安を感じて、緊張状態になるのは自然です。トラウマとなった出来事が終わった後にも、長い間、不安・恐怖が続く人もいます。不安が長く続くのは、ご自身を取り巻く世界についての見方が変わり、安全についての感じ方が変わり、悲観的になっている場合に起こります。トラウマとなった出来事・体験を想い出すと、恐怖が込み上げてきたり、不安な気持ちになると思います。また、時には何の前触れもなく起きてくる場合もあります。不安を引き起こすきっかけや手掛かりとなるものには、場所・時間・特定の匂いや物音、トラウマを想い出させるような特定の状況があります。
 
どのような時に不安になるのかについて、関心・注意を払ってみると、不安になるきっかけや手掛かりを発見することが出来ることもあります。すると、前触れなく起こる不安と思われていたものが、実は、トラウマを想い出させるきっかけや手掛かりによって引き起こされていることが発見できることがあります。 

2 再体験

トラウマとなった出来事・体験について考えたくないのに考えてしまう、思い出したくないのに思い出されてくる。それを振り払う事ができなかったり、出来事がもう一度起こっているかのような体験(フラッシュバック)が起きたり、悪夢を見るなど、日常的な体験とは相当に異なるショッキングな記憶を整理することが出来ず、その整理をしようとするかのように、心は自動的に記憶を繰り返し呼び起こし続けます。フラッシュバックは、自動的侵入的に生じるので、ご自身の感じ方、考え、体験を自分の力で制御できないと思われる方もいます。フラッシュバックは、何らかのきっかけにより生じる事もありますが、多くの場合、脈絡なく突然に生じます。また、トラウマの再体験がフラッシュバックや悪夢ではなく、強い感情やものの見方として現れる事もあり、自分を苦しめる考えや感じが続く事があります。 

3 集中力の低下

本や新聞、雑誌などが集中して読めない、会話についていけない、思い出せない、物忘れ、周囲の状況に注意が向かないなど、集中力の低下が起こり、同時に動揺、自身の気持ちが制御できないのではないか、などの強い心配が生じます。 

4 過覚醒

びくびくする、そわそわする、震えたり、驚きやすくなる、イライラする、眠れなくなるなど、覚醒が高まった状態や焦燥感が起こります。覚醒が続き、特に眠りが浅い時には、我慢が出来なくなる、強い怒りが生じることもあります。

覚醒状態は、危険から身を守る為の「戦うか逃げるか」により生じています。アドレナリンが分泌され、多くのエネルギーが生み出され、常に身体は警戒状態(発汗、動機など)として、攻撃に反応できるように準備をしています。
覚醒状態の高まりは、本当に危険な時には必要ですが、実際に危険がなくなった状況においても、警戒状態と不快が続きます。そして、危険に対してのもう一つの反応が、フリーズ(凍りつき)で、これは、トラウマ体験の最中に起こることもあります。 

5 回避

トラウマによる苦痛を何とかしようとして、自動的に生じる働きが回避です。特定の場所に行くことを避ける、その出来事を想い出す状況を避ける。例えば、夜間に被害を受けた方が夕方になると外出が出来なくなる、また、直接的には関連のない状況を避けることもあります。また、不快な気持を感じにくくなれるように、出来事・体験を認めないようにすることもあります。

これらが繰り返されると、感情の麻痺が起こる事があり、恐怖感の他、心地良さや愛情を感じなくなる、人々から自分が切り離されている感覚(離断)、周囲の世界が遠くに感じられることがあります。更に心理的ブロックにより、トラウマとなった出来事について想い出せないことや、記憶の一部が抜ける事(記憶障害/断片化)があります。 

6 怒り・苛立ち

多くの方は、怒りっぽくなった、攻撃的になった、イライラしていると感じます。温和で怒りを感じることに慣れていなかった人は、こうしたご自身の変化をどうしたらよいか分からなくなったり、怖さを感じることがあります。大切に思う人に怒りや苛立ちを感じる自分のことが理解できず、混乱することがあります。イライラが続く自分自身に腹が立つことも起こります。また、世の中に対しての不当性、不公平感を強く感じて、怒りが生じることがあります。自分に向けられた怒りは、自責感、罪悪感、無力感、抑うつへと向かいます。 

7 自責

ご自身を責めることが多くなります。やったことや、やらなかったことについて、ご自身の落ち度だと感じられる方が少なくありません。被害を受けた自分が悪いと考える人もいます。

生き延びる為に、普段はしない行動をした自分を責めることがあります。時には、周囲の人や友人、家族や知人から非難されることもあります。自責・罪悪感の為に、人と話をしたり、行動することを回避することがあります。ご自身を責めるのは、起こったことに対して責任を持とうとされているからだと思われます。そのことによって、ご自身をしっかりとコントロールしている感覚が生じることもありますが、一方で、無力感、落ち込みにつながることがあります。 

8 悲しみ・落ち込み

多くの場合、悲嘆や落ち込みが起こります。悲しみ、絶望、諦観(仕方がないとあきらめ)、泣くことも多くなります。希望を持てない何もできない(無力)と感じ、これまでの楽しみ(友人との語らい・趣味・余暇など)や仕事、人への関心をなくされることもあります。将来がどうでもよくなったり、人生の価値がないと思われて、自傷や自殺を考えることもあります。トラウマ体験によって、世界観やご自身を見る見方が大きく変わります。 

9 自己イメージ・世界観の変化

トラウマを受けた後、自分のイメージや周囲の世界の見方は、しばしば、ネガティブなものに変化します。多くの人が、自分が駄目な人だと思ったり、「自分が悪いので悪いことが起こった。」「自分が何とか出来ればよかったのにできなかった。」と考えることが多く、また、他人を否定的に見る、誰も信じられなくなることもあります。自分の感情も身体も、自分の命も自分では制御できないという想いを強烈に感じたかもしれません。「もうだめだ。」と感じることもあります。これまで世界は安全だと思われていた人は、突然、世界は非常に危険だと感じられ、これまでひどい経験をしてきた人は、世界はやはり危険で、人は信用できないと確信することもあります。そして、人への過度な緊張や不信感、打ち解けた付き合いが難しくなります。 

10 性的関係

性的関係にも影響がでます。無関心や恐怖感など、性的な関係が持ち難くなることがあります。親密な関係状況になると、無防備な感じが甦り不快観が生じることがあります。フラッシュバックが起きる、強いストレスを感じることもあります。 

11 アルコール・薬物

トラウマ体験の後に、アルコールやカフェイン、薬物(精神状態に作用するもの)の摂取量が増えることがあります。その事が、回復を遅らせる要因となる場合(逆効果:不安が高まる)、また、増加自体が問題を生じさせることがあります。

上記(1)~(11)は相互に関連して強化される事があります。